学習塾への通塾目的
子どもたちが、学習塾へ通う目的は大別すれば「進学」と「補習」の2つです。学習塾はこれら両方の目的に対応することが求められています。
進学を目的とする生徒には、「集団指導」、「個別指導」が考えられます。
集団授業で他の生徒より理解度が落ちている場合には、個別授業で補足することになります。
この場合、別の塾で個別授業を受けることは殆んどありません。
同じ塾で集団授業と個別授業を受講しないと、カリキュラムの違いなどにより非効率になってしまうためです。
補習を目的とする生徒には、どちらかといえば「個別指導」または「家庭教師」が向いています。
集団授業での補習は、生徒間で理解度が異なるので、1人1人のレベルアップが、難しいからです。
もちろん補習が目的で集団授業を受ける場合も多々あります。
これから個人塾を開業しようとしている方たちに、開業するにあたって必要最低限の知識をお伝えいたします。
学習塾の維持費
学習塾の維持費は大きく分けて3種類です。
最大の経費は何と言っても「人件費」です。
中でも講師の人件費が突出しています。
次は「教室の賃借料」。
そして集客のための「宣伝広告費」です。
もちろんこれら以外にも旅費交通費・通信費等の固定経費が掛かります。
特に集客のための広告宣伝費をどこまでかけるかも経営上の重要なポイントにもなってきます。
塾の教育・指導方針の確立
開業の前にやらなければならないことは、自塾の教育・指導方針を明確にすることです。
進学・補習のどちらを目的とするのか、それともその両方なのか。
集団授業か個別授業あるいはその両方に対応するのか。
どのような方法で教えるのかなどの方針を明確にしておかなければなりません。
キャッチフレーズも必要です。
これらをホームページやチラシなどに具現化し、集客の道具として活用するので熟慮に熟慮を重ねたキャッチフレーズを考えるべきです。
どこの塾にするかは保護者主として母親が決める
塾を選ぶのは保護者、主として「母親」です。
子供自身が選ぶことは滅多にありません。
例えば、友達がA塾に通っているので、ボクも行きたいと言っても「はいそうですか」と言って二つ返事で決める親はまずいません。
保護者が塾を選ぶ際には、「進学目的」と「補習目的」では真剣味も違います。
補習目的の場合には、ある程度の妥協をして決めますが、進学目的の場合には、あらゆる角度から納得するまで比較検討を行い決定します。
保護者の「塾の選び方」を徹底研究する
保護者がどのようにして塾を選ぶのか、「消費者の動向」を知らずして闇雲に生徒を集めようとしてもなかなか良い結果を得ることは困難です。
そこで、一般的(ここでは「難関校志望」のケースは考慮しないものとします)な保護者はどのような条件で塾選びをしているのかを徹底的に検証してみます。
1.無料体験授業の体験
保護者が塾選びに際して重要視するのが「塾の雰囲気」です。
子供が学習しやすい雰囲気なのか、生徒の様子はどうなのか、講師の教え方がどうなのかなどは子供と同時に保護者が最も気になる部分です。
この無料体験では、実際に自分の子供を担当する講師の授業を体験するのが通常です。
例えば、算・国・社・理の4教科を選択する場合には、全ての科目の実際の担任講師の授業を体験させてくれと要求します。
もちろん、子供のみならず保護者も同伴で体験を希望します。
この場合、保護者が見るのは、どちらかと言えば授業の内容よりも、講師の雰囲気と生徒たちの反応です。
どんなに教え方が上手で優秀な講師であっても、保護者・子供が好きになれない雰囲気であれば、塾として選ぶことはありません。
2.自宅から10分~20分以内の場所
通塾に時間が掛かり過ぎるのは時間の無駄です。
電車でも自転車でも片道20分以内が限度でしょう。
そうかといって近ければ良いかといえばそうとも言えません。
まずは、自宅から10分~20分以内を候補地として考えます。
3.駅近の場所
自宅からの通塾時間を考慮して場所を選んでも、塾が駅から離れ過ぎていては何もなりません。
駅から近い場所であれば、人通りも多く犯罪などに巻き込まれる可能性も低くなります。
4.塾の周囲の環境
自宅からの通塾時間、駅近の条件がクリアされたとしても、塾の在る建物の周囲の環境も大きな要素になります。
同じ建物に風俗店や飲み屋などが同居している場合には思わぬ事態に巻き込まれる可能性があるため、保護者は敬遠する環境条件です。
5.友達の少ない塾
例えば近所の塾で、同じ学校やクラスの友達が多い塾は保護者に敬遠されがちです。
学校の友達と一緒だとつい学校の延長になり、緊張感にも欠け塾の授業に集中できなくなることがあります。
友達や知り合いが居ても1人~2人位ならば許容範囲です。
ただし、塾内が、友達が多くても一緒に切磋琢磨できる環境・しくみづくりがなされており学校の延長線と子どもが感じない状況であれば問題ありません。
6.年間の総費用
何といっても、費用は塾選びの大きなポイントになります。
通常の授業料、季節講習会、テキスト代、テスト代などを合わせた年間費用は保護者が最も気になるところです。
集団授業の補習として個別授業の料金も大きな要素です。
7.合格実績
大手の進学塾などでは、有名・難関中学校への「合格実績」を競い合っています。
優秀な生徒が複数合格すれば「延べ人数」でカウントされることも承知しており、有名・難関校の合格実績のみで判断をして入塾させる保護者は減ってきています。
それよりも、保護者が気にするのは、自分の子供の志望校の合格実績です。
8.口コミ調査
保護者は体験授業などと同時に、「口コミ調査」を行います。
例えば、目星を付けた塾の前に居れば自分の子供を送ってきた保護者に会うことができます。
その保護者から塾や講師の評判などを聞き出します。
中には、自分の子供がこれから受験しようと思っている学校に合格した保護者を見つけ出してヒヤリングをする保護者もいます。
9.塾講師・塾長からのヒヤリング
体験授業の後または別の機会に、塾長や塾講師と面談し、直接に指導方針などについてヒヤリングをします。
その際に、志望校に関する情報が適切でなかったり、質問に対する答えが不満足だったりすれば塾選びの選考から外れることになります。
大手塾との差別化
個人塾や中小塾が、SAPIXや日能研などの大手塾とまともに対抗しても勝ち目のないことは明らかです。
大手塾には利点もありますが、欠点もあります。
これを検証し、大手塾が苦手とする客層をターゲットとしてみましょう。
東京に「宝島社」という出版社があります。
今では発行雑誌数も発行部数も多く一般にも知られる存在になっています。
まだ規模も小さかった当時は「ミリオンセラーは狙わない」方針を打ち出しました。
特定の限定された層=ニッチ層を狙う作戦を立て、「田舎暮らしの本」や「街中のヘンな看板」など出版し話題を呼びました。
大手塾の得意とする利点に対抗することは捨て、不得意とする欠点をカバーすることによって「差別化」を図ることが重要です。
「敵」を知らずして戦術を立てても戦に勝つことはできません。
大手塾の利点
合格実績が高くそれを裏付ける教材やカリキュラムが優れており、教務力も高い
中小の塾にはないノウハウ・情報を持っているので、特に難関校を目指す生徒はカリキュラムに沿って行くだけで学力が向上します。
校舎間における講師のレベルの格差が小さい
突出した講師は少ないかもしれませんが、各校舎における講師のレベルは一定の水準以上と言えます。
上位クラスでの競争は生徒の刺激になり相乗効果を生む
大手塾では定期的にクラス分けのテストを行っています。
常にこの上位クラスに留まる生徒は成績も安定して良く、殆どの生徒が有名・難関校を目指しています。
塾もこのクラスからの合格実績に期待しているため、あらゆる面で力を入れています。
これは学年で10人~15人ほどの生徒しかいない塾にはどうしても真似のできないものです。
大手塾の欠点
1人1人の面倒見は期待できない
特に上位クラスの生徒は、塾にとっても講師にとっても気になる存在で、名前もしっかりと覚えられます。
何とか第一志望校に合格させるためには、親との連携も密です。
しかし、中以下のクラスの生徒は、中堅校以下の志望も多く、痒いところに手が届くというような面倒見は期待できないといっても過言ではありません。
優秀な講師は上位クラスに配置される
いくら講師間のレベルが平均化されているからといっても、どうしても優秀な講師は上位クラスに配置されるのが常です。
中位以下のクラスの講師とは比較できません。
競争がプレッシャーになる子供には不向き
クラス分けや席次の変更は塾内のテストで決められます。
上記クラスの生徒は上位を維持しようと、中位以下のクラスの生徒は上位を目指します。
こうしたプレッシャーに耐えられない子供には大手塾は不向きです。
公立一貫校志望者には向いていない
第一に「合格実績」に影響しないことと、倍率が高いため模試等のデータから合否を判定するのが難しいため、殆ど力を入れません。
開業前にしなければならないこと
1.適正料金の設定
保護者にとって大事なのは、自分の子供の成績アップ・受験合格と同じように、「費用」です。
大手塾よりも高い設定では対抗できないことは言うまでもありません。
周辺の他塾の料金設定を参考にして保護者が納得できる料金設定が大事です。
保護者が最も重要視するのは見た目の料金よりも、1コマの授業時間による時間単位の料金、季節講習などの別途料金そして全てを含んだ「年間費用」です。
2.教育・指導方針・キャッチフレーズの設定
生徒を集めるには、新聞折込チラシ、ポスティング、ポスターなどのいくつかの方法があります。
広告媒体に記載する教育・指導方針と併せて、「決まり文句」となるキャッチフレーズを予め設定しておく必要があります。
保護者が心を動かすようなアイ・キャッチングな謳い文句も欲しいところです。
3.問い合わせに対する応対
広告媒体や口コミなどで保護者からの問い合わせがあったとき、誰がどのように応対するのかは入塾の成否を分ける大きなポイントです。
電話の問い合わせのみで入塾を決めることは殆んどあり得ませんが、一方で、応対が不満足な場合は、それで終わりです。
できる限り保護者には「来塾」していただき、面と向って話ができるように持って行ければ、入塾の確率はかなり上がります。
誰が電話応対しようが、保護者が興味を持つ方向に誘導することが重要です。
4.教務体制は盤石か
体験授業などで保護者が同伴で来塾したときは塾にとっては入塾の最大のチャンスです。
体験している生徒やそれを見学している保護者を十分満足させられるような授業ができているでしょうか?
講師は板書をするとき白板・黒板を向いたままで生徒を見ていなかったりしていませんか?
講師が勝手にしゃべっているだけではなく、生徒との交流ができているでしょうか?
たまには面白い事も言って生徒を笑わせたり、リラックスさせたりしているでしょうか?
保護者の目は厳しいのです。
「教務力」とは知識だけの問題ではなく、生徒といかにコミュニケーションが取れるかなども問われているのです。
自塾の講師の能力をしっかりと把握できているのか再度確認の必要があるのではないでしょうか。
もし講師に何かが欠けているようで、それが修復不可能であれば、講師の入れ替えが必要かもしれません。
「模擬授業」などで習得可能であるならば、しっかりと研修を行い、「体験授業」の顧客は絶対に逃さない体制作りが最重要課題なのです。
5.講師の選定
なかには、学生アルバイトを敬遠する保護者もいます。
専任のベテラン講師はそれなりに優秀であったとしても、必ずしも経営上から判断して最適かどうかは保証のかぎりではありません。
自分の従来からの考え方や教え方に凝り固まっていて、生徒や保護者にと相性が悪いことも考えられます。
もし、経営者として、学生アルバイトが最適と判断して雇ったのであれば、堂々とその理由を説明すれば良いのです。
現役の学生の知識は豊富でフレッシュなことは大きなメリットなのです。
6.面談で保護者を説得できるか
体験授業が不満足であれば、保護者は面談もせずにそのまま帰ってしまうこともあります。
この場合は殆んど失敗と考えられます。
体験授業の後に面談まで持って行ければ、入塾の確率もグンと高くなります。
この面談は必ず塾長が行なうべきで、講師に任せたりしないことです。
保護者は最高責任者と話をしたいのです。
自分よりも話が上手な右腕的人材がいるならば、塾長面談に同席させれば良いのです。
ここで保護者を説得できるかどうかで入塾が決まります。
他塾と二股をかけていて、その場で決められなくても、熱意・誠意さえ伝わればこちらを選択してくれます。
ロケーションの重要性
これから塾を立ち上げようとする場合には、立地条件としては駅から遠くなく、周囲の環境も良い場所を選ぶべきです。
一度開塾してから立地条件に問題があるために生徒が集まらないからといって簡単に移転する訳には行きません。
大事な要素ですから、場所は慎重に選びましょう。
同じように大事なことは、上述の「開業前にしなければならいこと」です。
しっかりと体制を整えたうえで開塾しましょう。
自塾の体制の確認
開塾を急ぐ余り、塾の周囲の環境も考えずに、歓楽街の傍に開塾しようとしていませんか?
やはり開塾を急ぐ余り、講師は頭数を揃えただけで、「教務力」の備わっていない人選をしていませんか?
これらは根本的な最重要課題ですから、万が一にも体制が整っていないのであれば、一からやり直さなければならないかもしれません。
例え一時的に集客できたとしても、「転塾」される可能性もあるのです。
教務力に問題があっても修正可能であれば直ちに実行しましょう。
もし、修正不可能であれば、思い切って講師の入れ替えを断行しましょう。
経営に「情」も必要な場合はありますが、「情」に流されれば経営は破綻します。
冷静に経営を見通し、直すが必要であれば、直ちに実行すべきです。
具体的な「集客の方法」
経営上納得のできる体制が整ったら、次は集客の方法です。
どんなに高邁な教育・指導方針を持ち、優秀で教務力を持った講師陣を整えていたとしても、「自塾の存在を認知させる」ことができなければ集客はできません。
存在を認知してもらうための方法は多くありますが、地域性や使える費用の額等の条件によって異なります。
また、認知の際に何を「売り」にするのかも大きな要素です。
お金を掛ければ集客できるというものではありませんので、いかに安い経費で効率よく宣伝活動ができるかがポイントです。
以下を参考にして自塾に適用できるものがあれば早速にも実行してみてください。
1.自塾を認知させる方法
これはいわゆる広告宣伝の方法ですが、費用対効果や地域性も影響してくるので、何が最適かは状況を判断して実施すべきと考えます。
❏HPの作成
自塾の名前で検索すると、検索上位にしておく必要があります。
HPの中身も、どのような塾なのかはっきりと分かりやすく掲載する必要があります。
塾の名前を知った保護者がまず最初に行うことがHPの検索です。
お問い合わせにつながるようなHPの作成を行う必要があります。
❏SNSのアカウント作成
FacebookやInstagramのアカウントを作成し、普段の様子をアップできるようにしておいてください。
意外と保護者の多くはSNSを活用しており、普段の投稿をよくみているものです。
自分の子どもがアップされていたら嬉しくもちろん感じます。
また、SNSには地域を限定した広告の掲載が可能です。
「認知」につなげるにはもってこいのツールです。
❑口コミ
集客方法において最も有効なのが、「口コミ」と言われています。
その一方で、最も難しいとも言われている方法でもあります。
口コミとは本来自然発生的なものではありますが、親しい保護者にお願いして意識的に口コミをしてもらうといった手法もあります。
❑通塾生徒・保護者からの紹介
口コミとは別に、現在通塾している生徒やその保護者からの紹介も効果的な手段です。
かつて東京の中堅進学塾が「紹介手数料」を支払って保護者の紹介を募ったことがありました。
この手法は、金銭がらみであり保護者間の評判が悪かったため、ほんの短い期間で終了する結果になりました。
紹介手数料を支払う手法は法的には何ら問題はなかったのですが、教育の場でのあけすけな金銭のやり取りが受け入れられなかったのです。
これは結果的に塾の評判を落としかねませんので、実行すべきではないでしょう。
「紹介で入ったら月々〇〇円値引きします」という手法はとても効果的です。
❑新聞折込チラシ
スーパーの新聞折込チラシは別にして、通常の宣伝用のチラシのレスポンス率は0.01~0.03%、即ち10,000部のチラシで反応が1~3件と言われています。
費用対効果としては低いので、塾の宣伝媒体としてはオススメできる方法ではありません。
それでも、最寄駅及び近隣2~3駅周辺に限定したチラシを1~2度試してみる価値はあるかもしれません。
❑ポスティング
ポスティングについての効果の統計は発表されておらず、その効果の判断は難しいところです。
例えば、チラシのポスティングは見もせずに捨てられることが多々あります。
しかし、ティシュペーパーに広告を添えて周辺にポスティングすると即座に捨てられることはありません。
ポスティングで効果を得るためにはそれなりの工夫が必要となります。
❑ポスター
最寄りの駅及び2~3先の駅にポスターを貼ることができれば「認知」の面では大きな効果が期待できます。
体験授業・イベントなどを掲載しておくといいでしょう。
❑看板
入居するビルの規定や周辺事情で許されるのであれば、ビルの入口近辺に「立て看板」を置くのも効果的な方法です。
余り経費のかからないありとあらゆる方法を模索してみることが大事です。
2.何を「売り」にするのか
上記の媒体を使って自塾の認知度を高める際に、何を売りにするかも考えておかなければなりません。
例えば、理念のみを謳っても入塾に結び付けることは難しいでしょう。
保護者が問い合わせをしたくなるような内容を盛り込む必要があります。
❑体験授業のお誘い
体験授業に参加してもらうのが最も手っ取り早い営業方法です。
これには上記の「口コミ」や「保護者からの紹介」が最も有効な手段です。
❑イベントの案内
「理科実験」は子供たちが喜んで参加してくれるイベントの1つです。
まだどこの塾にも通塾していない生徒や、他塾の生徒も参加してくれます。
また、「航空会社や空港の見学ツアー」も小中学生には人気です。
日本航空・全日空などの航空会社や空港も条件さえ整えば、積極的に見学を受け付けてくれます。
この他にもそれぞれの地域に密着した各種イベントも企画できれば、集客の大きな「タネ」になります。
個人塾を開業するためには、あらかじめ準備しておくことが意外と多いのです。
極論「白板と机と教材」があれば開業することは可能ですが、それでは寺子屋のような扱いになり、『学習塾・進学塾』としては周囲は認めません。
立地や設備・講師・体制・宣伝方法などありとあらゆる準備ができた状態で塾を開業することで周囲からの信頼をスムーズにつかめるようになり、自然と生徒が集まるようになるのです。
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